Amazonが公式にそう言っているわけではないものの、
アマゾンと物流大戦争 (NHK出版新書)
の作者である角井亮一さんは、ヤマト撤退でも当日配送を続行すると見ています。Amazon自身が配送するということもありそうです。
違う話ではあるものの、Amazonは通常は間に入る出版取次を飛ばして、出版社と直接取引する形も増加すると見られています。こちらの話もいっしょにやります。(2017/4/13)
2017/10/01:ヨドバシやドンキも自社配送網を構築
●Amazonは当日配送を続行、ヤマト撤退で自前化加速?
2017/4/13:Amazonの当日配送そのものが悪いとか、それを望む消費者が悪いとかといった精神論みたいなのも出ていますけど、問題はブラックな労働であり、ブラックでなくそれを実現できるのなら非難されるいわれはありません。徹底して顧客のニーズを満たそうとするAmazonが、当日配送をやめる可能性は低いと見られます。
また、ヤマトの撤退に関しても、「Amazonとの取引を全部やめるべき」というよくわからない原理主義的な意見もあります。ただ、当日配送の夜の分が一番の負担だったということですから、優先的にまず軽減という判断は妥当でしょう。
角井亮一さんは、このヤマト撤退でいきなりAmazongが配送を自前化するという話はしておらず、ヤマトが縮小した分の一部は、日本郵便などが受託すると見られています。
また、今回の記事では指摘がありませんでしたが、日本郵便が利益度外視で取りに行くという可能性もなくはないかもしれません。その場合は日本郵便が今度はブラック化するということもあり得ます。今のところ、日本郵便は余裕あるみたいですけどね。
ただ、大きな流れとしては、Amazonが直接配達もこなすという方向性に進むでしょう。これは昔からずっと言われていることですし、大きく報道されていないものの、実を言うと既にAmazonは一部、自前化していて、実績も作ってきています。
角井亮一さんは、注文から1時間以内で配送する「アマゾン プライム ナウ」という例を出していました。既に2015年から、「アマゾン」のステッカーを貼った自前の車両を使って商品を届けています。また、アメリカでも自前配送を拡大しているといった実績があります。
(
ヤマトが撤退してもアマゾンは当日配送を続ける:日経ビジネスオンライン 大竹 剛 2017年4月11日より)
●出版取次飛ばしの直接集配も進行中
配送の自前化とはちょっと異なる話ですが、出版取次飛ばしの動きもAmazonではあります。自ら出版社の倉庫から本や雑誌を集め、沖縄を除く全国で発売日当日に消費者の自宅に届けるサービスを今秋までに始める、と報じられていました。
一般に取次を経由すると販売価格の約1割が取次の取り分になっており、こちらの場合はコスト削減効果としても大きいと言えます。
そして、これは出版取次にとっては頭の痛い話。出版科学研究所(東京・新宿)によると、取次を介した2016年の出版物の販売額は、12年連続で前年を下回っています。大きな流れとして、出版取次を抜かす動きがあるのです。
(
アマゾン、本を直接集配 発売日に消費者へ 2017/3/22 12:55 日本経済新聞 電子版 より)
●Amazonの自前配送は飽くまで仕方なく?
宅配の自前化がちょっと違うというのは、この出版取次の話と異なり、Amazonは飽くまで宅配会社のできない分を補うという補完的な形を取ると見られていることです。
先の角井亮一さんよれば、日本よりも先行して自前配送を拡大しているアメリカでは、UPSやフェデックスといったアメリカの物流会社と顧客を取り合うような競合になるようなことはしていません。もうこれ以上運べないというレベルに達していたので、自前化を推進したというのが実態だと見られていました。
ただし、私は将来的に物流会社を脅かす存在になる可能性もあるのでは?と思います。物流は規模が大きい方が有利であり、Amazon自身も取り扱い量を増やして、コスト削減をはかるという選択肢を考えるでしょう。経験を積むことで、徐々に取り扱い量を増やしていくかもしれません。
また、Amazonは、大きく話題になったドローンによる配送方法など、新しい配送方法開発への意欲も旺盛です。やはりこれも取り扱い量を増やす方向性になっています。
さらに言えば、物流は規模が大きい方が有利ということは、Amazonの自前化の進展によって専業の物流会社の収益力が弱まる可能性もあるんじゃないでしょうか?
Amazonに倣って、競合のネット通販他社が後追いしてしまうといった可能性もあります。というか、ヨドバシカメラも既に一部で自前配送をやっています。
このように考えると、私は、将来的にAmazonが物流会社と競合する可能性も「なし」とは言えないと思います。
●企業の自由が認められるものと認められないもの
なお、最初に書いたヤマトがAmazonとの取引を続けることとか、Amazonが当日配送を続行することとかは、企業の自由であり、一律にダメというものではありません。感情的な批判が出ている飲食店などの24時間営業なんかもそうです。
しかし、企業の自由ではなく、明確にダメだというものもあります。それは、圧力によって不当に安い価格を強制するとか、ブラックな労働を強いて搾取することによって人件費などを削減するとかといったことです。ネットでは、ここらへんがごっちゃになって批判されていることが多いものの、明確に区別しなくてはいけません。
で、ここらへんを正常化した場合は、当然、配送料は今よりも高くなる方向に動きます。そして、その値上げの動きが、Amazonにとっての「その料金なら自前にした方がいいや」というラインへと近づかせ、これもまた自前化という選択肢をより取りやすくすると考えられます。
●ヨドバシやドンキも自社配送網を構築
2017/10/01:最近、アマゾンとヤマトが4割超の値上げで合意したとも報じられており、完全撤退とはならなかったようです。ただ、長期的にはアマゾンの配送自前化はあり得るんじゃないかと思います。
ヤマト値上げが裏目に? 運送会社化するアマゾン | 加谷珪一 | コラム | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト(2017年05月23日(火)11時34分)という記事も出ていました。
ここでは、「アマゾンはヤマトに依頼していた即日配達を企業間配送のSBS即配や日本郵政にシフトする可能性が高いが、アマゾンの取扱量の半分以上を占めるといわれるヤマトへの委託分をすべて他社に切り替えることは難しいだろう」と指摘。
そうなってくると、アマゾンはサービス水準を大幅に低下させるか、独自の配送網を構築するのかのどちらか。しかし、アマゾンがサービス低下を選ぶはずがなく、独自の配送網構築を考えるだろうという予測でした。
実際には前述のように、ヤマトの全面撤退はなしでした。また、ヤマトの分を振り替えていた他の運送会社はボロクソであり、サービス水準の低下も起きています。予想としては外れています。
(関連:
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ただ、前述の通り、長期的には正解だと思われます。Amazonはプライムナウで、既に運送会社ではなくアマゾンの自社スタッフが直接商品を手渡すということをやっています。記事では、さらに三越日本橋本店、マツモトキヨシなどの他社の商品もこのプライムナウで届けると発表したことを指摘。自社配送網の利用は拡大方向です。
加えて、自社配送網を使った通販サービスは量販店のヨドバシカメラやディスカウント・ショップのドン・キホーテなどもスタートさせているとも指摘。まだできるところだけというのだと思うものの、自社配送網の利用拡大という大きな流れはあると思われます。
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