世界ではマイクロビーズが環境汚染で禁止 ただ科学的根拠は不明確で書いていたマイクロプラスチック(マイクロビーズ、マイクロプラスチックビーズ)に関する論文が撤回されました。しかも、撤回の理由を見ると、「捏造」と言って差し支えない内容です。
2017/5/10:
●データが存在せず…マイクロプラスチックビーズの論文が捏造で撤回
●マイクロプラスチックビーズ、そもそも本当に規制は必要なのか?
●規制ありきで根拠なし…非科学的なマイクロプラスチック規制の議論
2020/08/12:
●有害なのはプラスチックそのものではない?濃縮するという役割
●環境ホルモンを濃縮してしまう!…というが、これがまた嘘だった
●「はっきり有害だとわかっていない」規制派の研究者も認める
●データが存在せず…マイクロプラスチックビーズの論文が捏造で撤回
2017/5/10:
米科学誌サイエンス、論文の撤回を発表:朝日新聞デジタル(2017年5月5日06時32分)という記事によると、米科学誌サイエンスは3日、2016年6月に掲載した、微小なプラスチックごみ「マイクロプラスチック」が、稚魚の生態に影響を及ぼすとした研究論文を撤回すると発表しました。スウェーデンのウプサラ大学の研究チームがまとめた論文です。
理由についてサイエンスは、「実験のオリジナルデータが確認できなかった」と言っていたそうです。ただ、これはわかりづらい言い方かもしれません。記事によると、そもそも今回の調査の発端となったのは、研究者が、実験が行われたはずの施設にいなかった疑いが浮上したためでした。
そこで、スウェーデンの倫理審査委員会が調査を行ったところ、実験の生データがなく、手順も不明確であったことが判明。そして、4月に撤回を勧告したという流れでした。これは「捏造」とみなして構わない内容でしょう。(
米科学誌、プラ粒子の論文撤回 実験データ確認できず - 西日本新聞(2017年05月04日 20時53分より)
●マイクロプラスチックビーズ、そもそも本当に規制は必要なのか?
以前書いた
世界ではマイクロビーズが環境汚染で禁止 ただ科学的根拠は不明確は、タイトルでわかるように、本当にマイクロプラスチックが危険なのかよくわからないという話でした。
これは、もともとマイクロプラスチックは危険なので規制すべき…という論調の記事を読んでいて、危険性に関する根拠が何一つなかったがために疑問に思って調べてみたところ、案の定まだしっかりした証拠はなかった…という経緯でした。
もちろん今後危険性が確かめられる可能性があるのですけど、そうじゃない段階で根拠なく決めつけてしまうというのは問題があります。水素水なんかでも似たようなことを書いたように、その考え方なら迷信でもデマでもいちいち信じて実行しなければならないという馬鹿げた話になります。実際に実行に移すのは、きちんと効果などが証明されてからで良いのです。
●規制ありきで根拠なし…非科学的なマイクロプラスチック規制の議論
ただ、実際問題、こうした根拠なき決めつけによる情報の拡散というのは、広く行われています。偽ニュース問題と同様のスタイルです。特に環境分野では、「良いことをしている」という大義名分による間違った正義感で、不確かな情報の拡散を促してしまうということがよくあります。
ビジネスジャーナルは貧困層叩きの捏造をしていたところなので、そもそも信頼性が低いのですが、
人体に危険なマイクロビーズ、化粧品やソープで使用野放しの実態!米国で禁止の州も 2015年12月4日 6時0分 ビジネスジャーナル(文=佐々木奎一/ジャーナリスト)という記事で、そういった問題ある報道がされていました。
記事では、断定こそしていないものの、「マイクロビーズは殺虫剤などの化学物質がつきやすく、これを食べた動物プランクトンや魚が体内に有害物質を蓄積する恐れがあり、食物連鎖で環境全体を汚染し、人間にも深刻な影響を与えるリスクがある」と書いており、不安を煽っていました。
上記の根拠となる研究の情報はない一方で、"マイクロビーズを含むパーソナルケア製品の製造を2017年末から禁止し、18年末に販売を禁止する法律を制定した"など、海外では規制が進んでいることを書いて、読者を焦らせています。
さらに、"マイクロビーズは「ポリエチレン」「ポリプロピレン」と表記されているケースが多い"という情報を元に、"驚くべきことに、特にポリエチレンの入っている製品は、スクラブ洗顔剤のみならず(中略)化粧品全般に及んだ"と、多くの製品に含まれていると主張して、読者の不安感を増大させていました。
ただ、このことはマスコミだけでなく、政治にも責任がありそうです。前述の通り、海外で規制が先行しているというのがその現れの一つなのですけど、日本でマイクロプラスチック問題を担当する環境省の海洋環境室も「G7の首脳宣言でマイクロプラスチックは世界的問題と宣言されている」と説明していたそうです。その上で、記事では、「日本ではマイクロビーズの規制は一切しておらず、野放しの状態」と批判的に書いていました。
でも、こうした規制をするにはきちんとした根拠が必要なのですから、順番が逆です。今回の論文撤回で、すべてのマイクロプラスチックの論文が否定されるわけではないのですけど、多くの研究で同様の結果が確認できないと確かとはいえないというのが、科学です。科学に政治を持ち込んで、非科学的にすることはやめましょう。
●有害なのはプラスチックそのものではない?濃縮するという役割
2020/08/12:その後研究は進んだかな?と検索。日付が不明ですが、
第1回 忍び寄るマイクロプラスチック汚染の真実 | ナショナルジオグラフィック日本版サイトというものが出てきました。マイクロプラスチック汚染について早くから研究を続けてきたという東京農工大学農学部環境資源科学科の高田秀重教授に話をうかがったものです。
読んでみると、最初に出てきたのは、カタクチイワシを調べたところ、8割の消化管の中から、様々なプラスチック片が出てきたと脅かす話。確かに気持ち的にそう言われると嫌なのですけど、それによって魚、あるいはそれを食べる人間に健康被害があるかどうかは書かれていません。やはりこの時点ではよくありませんでした。
ただ、今回は危険性が理解できそうな話もありました。「プラスチックには、もともと添加剤が入っていますし、汚染物質を吸着してしまう性質もあります。海中のプラスチックの汚染物質濃度は、周辺の海水中の十万倍から百万倍にもなるんです」という話です。
この説明だと、要するにプラスチックそのものの有害性ではなく、プラスチックが有害物質を濃縮してしまうということですね。これでしたら理解できます。ただし、理論的にそうであっても実際にそうなっているか?という話はやはりなし。可能性を感じる話にはなってきたものの、結局、良くないですね。
●環境ホルモンを濃縮してしまう!…というが、これがまた嘘だった
嘘くささを増しているのが、「これら(引用者注:汚染物質)の中には、内分泌撹乱物質、いわゆる環境ホルモンと言われるものもあります。環境ホルモンは、90年代にちょっと騒がれすぎて、今は反動で報道されにくくなっていますが、だから安全というわけじゃないんです。内分泌系の撹乱だけではなく、動物実験や細胞実験でいろいろな影響が示唆されていますので、取り込まない方がいいに決まっています」と、環境ホルモンについて強調していたこと。
環境ホルモンも一部の研究で捏造や間違いが強く疑われたもの。また、有害であること自体は間違いではないものの、問題は濃度なんですよね。環境ホルモンが大騒ぎになったのは極めて低濃度でも有害とされたためでしたが、これが全くの嘘でした。自然界レベルとは全然異なります。
また、「禁止されてもう使われていない化学物質PCBなども、環境中に残留しているものが吸着して、高濃度になっています」ともしていました。ただし、これも結局、自然界でプラスチックがPCBを有害と言える濃度にまで高めているかどうかが重要ですけどね。プラスチックの影響を証明する必要があります。
●「はっきり有害だとわかっていない」規制派の研究者も認める
うーん、ニセ科学者くさいな…と思っていたら最後のところで、「ただ、マイクロプラスチックが有害であるとはっきり分かったわけではありません。国際的に進められている対策は、予防原則的な立場からのものです」と認めていました。やっぱりそうですよね!
ただ、記者の方が良くないなと思ったのが、「実際に、多くの国々や自治体で、様々な施策が取られるようになってきているのはまぎれもない事実」として、科学より政治を優先していたこと。これは逆じゃないといけませんよ。新型コロナウイルス問題などで考えてみてください。最悪です。
科学的根拠が確かではないことを認めた上で、可能性を考えて予防的にという謙虚な立場であれば私は防止策をとっても良いかなとは思います。人によって違うでしょうが、私は絶対反対という立場ではありません。ただ、現状の推進派は根拠なく不安を煽るもので謙虚さの欠片もなく、これは絶対に間違いですね。
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