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伝統を守るべきという無意味で非論理的な主張 なぜと聞かれて説明できない暗黙のルール


 「伝統を守るべきという無意味で非論理的な主張」というだいぶ攻撃的なタイトルになってしまいましたが、伝統を守るべきという主張はよくあるけど、これに根拠は特にないんじゃないの?という話です。そして、こういう「なぜと聞かれて説明できない暗黙のルール」が、社会をおかしくしているケースがありますよ、という話。例えば、世界金融危機もそういった根拠のないルールが引き起こしたと指摘している人もいます。

 この関係で、<なぜと聞かれて説明できないアフリカ民族の暗黙のルール>、<世界金融危機はこのせい?現代社会も謎ルールにあふれている>、<「伝統を守るべき」という主張は卑怯 本来代わりに言うべきなのは…>などをまとめています。

2023/04/17追記:
●「伝統を守るべき」という主張は卑怯 本来代わりに言うべきなのは…
2024/01/12まとめ:
●女性のリーダーやハンターが多数…大昔の人は現代人より合理的? 【NEW】


●なぜと聞かれて説明できないアフリカ民族の暗黙のルール

2017/5/27:伝統の話の前に「ハビトゥス」という概念について。「ハビトゥス」というのは、フランスの社会学者ピエール・ブルデューさんが提起した概念で、"人々の日常経験において蓄積されていくが、個人にそれと自覚されない知覚・思考・行為を生み出す性向"と説明されています。(大辞林 第三版より)

 ただ、正直この説明だとわかりづらいですよね。それよりも「ハビトゥス」をブルデューさんが発見したときのエピソードを読んだ方がわかりやすいでしょう。ブルデューさんは、北アフリカにあるアルジェリアの山奥でカビル族(カビール人などとも)と呼ばれるベルベル人の一種族とともに暮らしていたことがあり、そのときに見つけたものです。
(ソニーはいかにして凋落したのか?日本企業の「タコツボ化」の考察[橘玲の日々刻々]ザイオンライン 2016年4月22日より)

 カビル族の住居は長方形で、低い壁によってふたつのスペースに分けられていました。一方は壁が少し高く、面積も広く明るい部屋。男性たちが眠り、客人をもてなし食事をふるまうための部屋です。もう一方のスペースは狭く暗く低い。女性と子どもたちが眠ったり、家畜を飼ったりするための部屋です。

 ブルデューさんが「なぜ家をこのように配置するのか」と尋ねたものの、カビル族は怪訝な顔をするだけで、理由を答えることができませんでした。そもそも彼らには、これ以外の家の配置はあり得ないため、説明しようがなかったのです。

 しかし、ブルデューさんや私たちのように外部に済む人間であれば、世界にはそれ以外にも多くの部屋の配置の仕方があることを知っています。このケースのように、「なぜこのようなことをするのか」と外部の人から訊かれても答えられない暗黙の習慣やルールなどが、「ハビトゥス」と呼ばれるようです。


●根拠がない…伝統を守るべきという無意味で非論理的な主張

 この話を聞いて私が何となく思い浮かべたのが「伝統」でした。もっと言うと、「守るべき伝統」とか「伝統を守らなければいけない」といったものですね。これらは無条件に良いとされているものの、なぜかを説明することができないものだと思われます。ただし、「伝統を守るべき」と主張する人たちも、無意識に守るべき伝統と守らなくて良い伝統を選別しているという指摘もあります。

 そもそもあらゆる伝統を守ることが可能か?と言うと、無理な話ですからね。そんな現実の中で「すべての伝統を守るべきか?」と聞かれれば、彼らもイエスとは言わないでしょう。彼らにとって守るべき優先順位の低い伝統というのもあるはずです。つまり、無条件に「伝統を守るべき」と、実際には彼らも考えていないと言えます。

 「伝統を守る」とは何か|教員コラム|関西大学 社会学部(妹尾 剛光 マス・コミュニケーション学専攻)では、"伝統を守ることはよいことだと考える人々は、歴史の中から自分がよいと考えるものを取り出してきて、それが伝統だと考えることになる"と説明していました。一方、"それが嵩(こう)じて、自分が認めたくないこと、認めると困ることは歴史の中にはなかったのだと思いこむ、あるいは、思いこもうとする人々まで出てくる"ことも指摘していました。


●世界金融危機はこのせい?現代社会も謎ルールにあふれている

 伝統を守ることが果たして良いことなのか?といった話は、過去になぜ伝統を守る必要があるのか?人口減少に苦しむ島の自業自得な伝統で書いています。他に、お祭りに出ないと罰金を課している地域という話もあり、これは比較的表題の話と近いケースでした。

 ただ、それ以外にも部活の先輩のしごきや企業の理不尽な慣習の話など、かなりいろいろなものを入れた投稿でした。実を言うと、最初の記事でも、ジリアン・テットという方が、私たちが暮らす現代社会にも「ハビトゥス」があふれていると指摘していたのです。

 このテットさんは、世界金融危機のときに、超エリートが集まるウォール街の投資銀行も不合理な「ハビトゥス」に支配されていることを発見しています。そして、この話を紹介した橘玲さんは、「自分の所属する組織を考えれば、片手では足りないくらい即座に思いつくだろう」と書いていました。

 金融危機の例というのは、なぜそうなのかを論理的に説明できない「伝統」というのは、甚大な被害をもたらすこともあるという話になっています。ただ、これは結局、「無意味なことはやめて論理的であれ」ってだけですからね。意味のないことを好んでしようとする人はおらず、ここだけ読むと何を当たり前のことを…という話です。

 ただ、わかっていたとしてもなかなか変えられないものでもあるでしょうし、そもそもの「ハビトゥス」の定義に"個人にそれと自覚されない"とあったように、内部からはなかなか気づくことができないものでもあるのでしょう。したがって、なかなか気づくことができない「ハビトゥス」を見つけて改善するだけでも、ライバルとの差を大きくあけることができるかもしれません。


●「伝統を守るべき」という主張は卑怯 本来代わりに言うべきなのは…

2023/04/17追記:以前書いたものとだいぶ重なるところがあるのですが、改めて「伝統を守るべき」という主張について考えていると、これは卑怯な主張だよな…と思ってしまいました。なぜ「卑怯」という話につながるのか?というのはわかりづらいですので、順を追って説明していきます。

 まず、仮に「伝統を守るべき」という主張が「正しい」とした場合を考えていきましょう。「伝統を守るべき」という主張が正しい場合、すべての伝統を守らなくてはいけません。しかし、以前も書いたようにこれは不可能。倫理的に守れなくなる伝統がある他、すべての伝統を守るには人員やコストの面などで不可能。選別する必要があります。伝統守る派の人も、ここまでは理解してもらえるでしょう。

 では、どのようにして、守るべき伝統を守らない伝統を選んでいくか?というと、これは結局、好き嫌いの問題になっちゃうんですよね。他に町おこしに使えるなどのメリットの問題でも選べますが、これも根本的には魅力があるかどうかなのでやっぱり好き嫌いの問題。伝統を守るかどうかは、大体好き嫌いの問題に落ち着くと思われます。

 で、そうした自分の好き嫌いの問題を、まるで絶対にみんながやらなくちゃいけないことのように「伝統を守るべき」と言って、他人に強制するのは卑怯じゃない?と思ったんですよ。その伝統が好きなのであれば、「好きだから守りたい」と堂々と言って、「協力してください。お願いします」と頼むのが本来の姿。上から目線で「伝統を守るべき」と強制するのは違うでしょう。

 でも、「伝統を守るべき」と言う人が悪い人なわけでもないと思うんですよ。「単に好きなだけ」ということに気づいていないし、「伝統を守るべき」という楽なスローガンを使っているだけでもあるんだと思います。ちょっと新興宗教の勧誘と似てますかね。新興宗教の人も実は大体がむしろ「いい人」で、自分が良いというものを信じ込み、それが絶対であるかのように思い込んで勧誘。本当は好き嫌いの問題で、誰しもがやらなくちゃいけないことではないということは、理解してもらいたいところです。


●女性のリーダーやハンターが多数…大昔の人は現代人より合理的?

2024/01/12まとめ:伝統という話とは違うのですけど、昔の人って意外に合理的だったのかもしれない!と驚いたのが、男は仕事・女は家庭の根拠である狩り・採集と育児の役割が嘘で女性ハンターが多かったという話。こちらにも転載しておきます。

 「男は狩り・女は採集…実は嘘」という証拠が見つかったという話。昔は女性ハンターもいたんだそうです。こうした研究に詳しいナショナルジオグラフィックの記事で読みました。9000年前に女性ハンター、「男は狩り、女は採集」覆す発見 |(2020.11.09)という記事です。

 女性の狩人が稀な存在であるのなら「男は狩り・女は採集」は依然として有効だと言えるでしょう。ところが、学術誌「Science Advances」に発表された論文によれば、当時の南北米大陸では、女性のハンターは例外的な存在ではなかったそうです。

<論文の著者らはこの発見を受けて、米大陸全域で発掘された同時代の墓の調査結果も見直した。その結果、大型動物ハンターの30~50%が女性だった可能性が明らかになった。
 (中略)先史時代には男性が狩りをし、女性は採集と育児をしていた、というのが広く知られている考え方だ。だが一部の学者は、こうした「伝統的な」性別による役割分担は、19世紀以降の世界の狩猟採集民を調査してきた人類学者の記録に由来するもので、古代の人々にも当てはまるとは限らないと主張してきた>

 男女の役割分担説は近年の狩猟採集民由来だったんですね。つまり、性による役割分担は最近の人類の特徴のようです。今回の研究には関わっていない米マイアミ大学の考古学者パメラ・ゲラーさんは、証拠が以前からあったにも関わらず見過ごされてきたことを指摘。現代人の差別的な偏見のせいで気づかなかっただけなのかもしれません。

 米マイアミ大学の考古学者パメラ・ゲラーさんは、「それ(引用者注:男女の役割分担)が常識になっているので、女性の骨格に狩猟の痕跡があったり、狩猟道具と一緒に埋葬されていたりする理由を説明できないのです」 とも言っていました。やはり以前から女性が狩りをしていたと考えられる証拠はあったということでしょうね。

 発掘にあたったランダル・ハースさんも思い込みがあり、前述の通り、最初は墓の主を男性だと思い込み。また、性別が判明する前の時点では、おそらくは社会的に高い地位にあり、集団のリーダーだったかもしれないと推定されるような発掘内容だったことまではわかっていました。こうなると、大昔は女性リーダーが少なくなかった可能性も検討しなくてはいけないかもしれませんね。他に以下のような話もありました。

<狩猟の安全性と効率を高めるためには、性別に関わらず、できるだけ多くの健康で丈夫な大人が必要とされただろう。子どもが離乳した後の母親なら、大がかりな狩猟を手伝うこともできると、(引用者注:調査チームには参加していない)米ニューヨーク州立大学ビンガムトン校の考古学者キャスリーン・スターリング氏は話す。(中略)また、赤ん坊がいても、コミュニティーで育児を手伝う人がいれば狩猟は可能だったかもしれない>

 なお、いつも書いているように、人間は個人差が大きい生き物であり、男女差よりも個人差の方がずっと大きいです。能力の差、向き・不向きを考えると、男女関係なくそれぞれに最適な仕事をこなすというのは、最もパフォーマンスが良くなる合理的なやり方。今の人より大昔の人の方が合理的な考え方をしていたというのは、かなり意外な話です。


【本文中でリンクした投稿】
  ■なぜ伝統を守る必要があるのか?人口減少に苦しむ島の自業自得な伝統

【その他関連投稿】
  ■自治会・町内会は必要?不要? 入会金だけで6万円・寄付の強制という問題
  ■本当にある現代の村八分 南馬宿村の秋田県じゃなく新潟県関川村で
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  ■村八分の架空の自治体「南馬宿村」 「馬宿村」なら実在する?
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