退職理由ランキングを見ていると、仕事を辞める新卒学生が多いのは会社に原因があるのではないかという分析がありました。
この推測はそれほどおかしくないと思ったものの、「就職情報サイトがミスマッチを加速している」「転職手段が増え、転職自体が容易になった」「若者の志向の変化」といった説明はどうかと思いました。
というのも、「新卒3年目までの離職率」は別に最近増えたってわけじゃなく、今も昔も変わっていない状況のためです。
●新卒採用学生の退職理由ランキング
企業の口コミサイト「Vorkers」が発表した、新卒入社で3年以内に退職した平成生まれの若手社会人の「退職理由ランキング」(2007年~2015年に新卒3年目までに退職した元社員から投稿された回答・全627件)の結果は以下の通りでした。
<退職理由ランキング>
1位 「キャリアの成長が望めない」25.5%
2位 「残業・拘束時間の長さ」24.4%
3位 「仕事内容とのミスマッチ」19.8%
4位 「待遇・福利厚生の悪さ」18.5%
5位 「企業の方針や組織体制・社風などとのミスマッチ」14.0%
(
「新卒社員の3割が3年で辞める」はなぜ30年間変わらないのか|採用から評価、育成、戦略まで!毎月人事手帖|ダイヤモンド・オンライン 2017年4月20日 『日本の人事部』編集部 より)
●離職理由調査で判明 仕事を辞める新卒学生が多いのは会社に原因がある
うちでは過去に学生側、会社側ともに採用の際に嘘をつくことでミスマッチが起きているという話を書いていました。もちろんこれは良くないことなのですが、お互い様なところがあると思っています。
ところが、この記事では、"明らかに、企業側の「情報開示」の姿勢に問題がある"としていました。問題なのは、主に会社側という見方。以下のように分析していました。
"この結果から分かるのは、「キャリア成長が望めない」「残業・拘束時間が長い」「企業の方針や組織体制・社風などが合わない」など、採用選考の段階で学生に企業の内実をきちんと伝えきれなかったことが退職の大きな理由になっている"
●就職情報サイトがミスマッチを加速している?
インターネットによる就職情報サイトが普及したことは、情報が増えたということで良いことのように思えますが、記事では、むしろこれが悪化させたと見ています。
情報が増えることにデメリットというのもあるものの、ここで挙げられていた理由というのは、情報の非対称性の問題と言った方が良さそうです。先ほど企業側が嘘をついているのが問題とされていたように、就職情報サイトでは良い情報しか書かれていないために、ミスマッチを加速させているという見方でした。
"就職情報サイトに掲載されている情報は基本的にPRであり、いくら眺めてもその企業の良いところしか見えてこない。企業側が良いところしか出していないのだから当然だが、そのような状況では「自分に合った優良企業」を探し出すことは難しい"
●「新卒3年目までの離職率」は今も昔も変わっていない
ただ、この話の前の部分、元記事のタイトルになっている"「新卒社員の3割が3年で辞める」はなぜ30年間変わらないのか"の話は、少々怪しいものを感じました。
"1987年以降、「新卒3年目までの離職率」は概ね25~35%の範囲で推移している理由"として、以下のようなものが挙げられています。
"キャリア採用の浸透とともに転職に対する抵抗感が少なくなったことや、転職手段が増え、転職自体が容易になったことなどがその理由として考えられる。その他にも、近年の「ゆとり世代」「さとり世代」と呼ばれる若者の志向の変化や時代背景など、さまざまな見方がある"
ただ、「新卒3年目までの離職率」が大きく上がっているのではなく、実際には「ほとんど変わってない」という分析でした。
それが事実であるのであれば、「転職手段が増え、転職自体が容易になった」「若者の志向の変化」などの離職者が増える説明だけをしているのはおかしいです。同時に離職者が減る理由が必要で、両者がうまい具合に釣り合っていると説明せねばなりません。
これは先ほどの「インターネットによる就職情報サイトが普及で悪化」も同様ですね。実際には悪化しているわけではなく、昔から離職率は変わっていないということなので、説明としてはおかしいです。
なので、私はそもそも若者たちが仕事を辞める理由も、あまり変わっていないのではないか?と疑いました。これは過去の離職理由調査があればわかる話ですけどね。
●やっぱり中小企業より大企業の方が離職率が低い
このように分析に妙なところがあるものの、データ的なものは嘘ではないでしょう。おもしろいと思ったのが、"実は3年で3割が辞めると言っても、従業員規模によってその状況は大きく異なる"というデータでした。
<新卒3年目までの離職率(平成25年3月卒)
採用人数(人) 3年以内離職率
5未満 約6割(59.0%)
5~29 約5割(49.9%)
30~99 約4割(38.6%)
100~499 約3割(31.9%)
500~999 約3割(29.2%)
1000以上 約2割(23.6%)
厚生労働省「新規大学卒業就職者の事業所規模別離職状況」(平成25年3月卒)より
単純に大企業の方が離職者が少ないんですね。これを記事では、大企業志向(安定志向)としていたものの、実際問題現実として待遇に格差があるのですから、当然といえば当然でしょうね。
私は、学生らが受かる可能性の低い大企業にエントリーすることは、学生側・会社側ともに無駄が多いため避けるべきだと考えています。
しかし、このように大企業の方が満足できる良い環境であることは否定できないのですから、大企業にエントリーが集中してしまうことは防ぎづらいと思われます。
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