日本はどこでも水道水が飲める国と言われていますが、実はそうではなかったようです。2.2%の人は水道が使えないそうです。
とは言っても、この2.2%の人が水を飲めないわけではなく、井戸水などがあります。本当に問題なのは、まともじゃない飲水を飲んでいた人たちがいたということです。
●国土全体において水道水を安全に飲める日本はすごい!
日本すごい系の話では、日本は水道水が飲めるすごい国!という話があります。例えば、
「水道水が飲める」日本は、こんな“すごい”国だった! | 経済は地理から学べ! | ダイヤモンド・オンライン(2017年3月9日 宮路秀作 [代々木ゼミナール・Y‐SAPIX東大館地理講師] )という記事がそれです。
これは国民の全員が飲めないという定義ではなく、国民の全員が飲める国という話。記事では、"諸説ありますが、「国土全体において水道水を安全に飲める国」は世界に15ヵ国しかありません"としていました。この15カ国に我々の日本国も入っているのです。
(ほかは、フィンランド、スウェーデン、アイスランド、アイルランド、ドイツ、オーストリア、スイス、クロアチア、スロベニア、アラブ首長国連邦、南アフリカ共和国、モザンビーク、オーストラリア、ニュージーランド)
そして、これは事実なのか?というのが、今回の話。実を言うと、うちでも過去に
水道水の飲める国は世界で13カ国のみ 南北アメリカは全滅ってのをやっているんですけどね。
●日本でも2.2%の人は水道が使えない
厚生労働省によると、日本全国で水道が使えない住民は全体の2.2%(2014年度)だと言います。
しかし、冒頭ですでにバラしているように、これは本当の問題ではありません。なぜかというと、"こうした集落には清浄な水源があり、井戸や湧水を利用していることが多い"ため。
厳密に言うと、「国土全体において水道水を安全に飲める」の条件から外れてしまうと考えられるものの、きれいな水を飲めているのですから、特に目くじらを立てる必要はないでしょう。いちゃもんつけているようなものです。
●日本は水道水が飲めるすごい国…という嘘
ただ、本当に問題なのは、黒い水を飲んでいる地域があるということ。
「黒い水」を飲んでいた限界集落の挑戦:日経ビジネスオンライン(寺岡 篤志 2017年5月1日)という記事では、上記の2.2%の話とともに、黒い水を飲んでいた大分県豊後高田市の中黒土集落のことが書かれていました。
この話を理解するにあたり、先に「限界集落」という言葉を説明しておきましょう。限界集落とは、"過疎化・高齢化が進展していく中で、経済的・社会的な共同生活の維持が難しくなり、社会単位としての存続が危ぶまれている集落"のことを言います。(
限界集落(げんかいしゅうらく)とは - コトバンクより)
中黒土集落に住んでいるのは、現在は11世帯15人で、13人が65歳以上。なので、ここも限界集落と言えます。そして、このような"限界集落に水道という大きな投資ができない自治体は多い"のが現実だとのこと。"収益の見込めない地域への水道新設はハードルが高い"のです。
河川管理に携わってきた大分県職員の加崎史啓さんは、"豊後高田市に水道敷設も掛け合った"ことがあるのですが、"1億円程度かかる費用が倦厭され「水道事業の経営が成り立たない」と断られた"そうです。
これでは、「日本は水道水が飲めるすごい国」などと誇っていられません。
●日本にも黒い毒水を飲む集落があった
この中黒土集落の地下水は、単に「黒い」という色だけで問題になっていたわけではありません。"中黒土の地下水にはマンガンが混ざり、含有量は水道の基準の32倍に上る"ものだったこと。鉄も7倍でした。
中黒土集落の生活用水は、まず"井戸水をタンクに貯水して暫く放置"。そこで"マンガンなどを沈殿させた後、上澄みを利用して"いました。
ところが、これだけですと、"残留するマンガンなどの影響で、洗濯物は茶色に染まってしま"います。"白い衣服は着られなかった"というほどです。
一番の問題はなんと言っても健康でしょう。"飲食用にも使っている住民の中には、マンガン中毒の症状と疑われる関節痛を抱える人が多かった"そうです。これはもう「毒水」と呼ぶレベルでしょう。
●中黒土集落だけじゃない?限界集落でのインフラ維持は基本的に難しい
救いがあるのは、中黒土集落では今はもうこの毒水を飲んでいないということ。とは言っても、水道水が飲める地域になったわけではありません。前述の通り、採算が合わないところでしたからね。
先程も出てきた大分県職員の加崎史啓さんらは、最終的に"住民が自ら保守管理できる小型浄水設備を提案"。加崎さんらは"県にも直談判し、市と折半で約800万円の設置費用を捻出"してもらいました。その後の問題では、追加工事の費用30万円をクラウドファンディングで手当てと、苦労してきれいな水を飲める設備を作りました。
それでもまだ"3人の住民が手弁当で保守管理に当たる"という労力が必要ではあるものの、"2011年の稼働後、水質はマンガンも鉄も基準値の10分の1以下になった"とのこと。
「風呂の底が見えた!!」と喜んだとか、"目詰まりを起こすマンガンのせいで使えなかった給湯器"を購入したとか、いった話もありました。海外ではなく、日本にもこういう地域があったのです。
また、これで日本が本当に「国土全体において水道水を安全に飲める国」になれたかどうかもわかりません。採算の合わない限界集落には水道を作らないというのは、中黒土集落だけに言える話ではありませんからね。加崎さんは「安定した清浄水源を確保するのに苦労する集落は多い」と話していました。
少し冷たいと思うようなことを言っちゃうと、こうした限界集落でのインフラ整備や維持は難しいというのは現実だと思います。ですから、私は国や自治体を「冷たい」と責める気にもなれません。
ただ、少なくともこうした苦労をしている人がいるのを無視して、無邪気に「日本すごい!」とはやらないでほしいとは思います。それは美しくない人がやることです。
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