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研究不正大国日本 撤回本数世界一など、トップ10の半分が日本人


 日本が研究不正大国だという話は、何度も指摘しているのですが、日経新聞でまたそういう記事があったので読んでみました。タイトルにしたように、撤回本数ランキングで日本人が活躍しているからってことみたいですね。はっきりとしたデータ的な証拠があるため、研究不正大国と言われても仕方がないようです。

2018/08/23:
●撤回本数世界一など、トップ10の半分が日本人というすごさ
●論文数は少ないのに不正論文だけは多い日本、世界を圧倒
2021/06/17:
●新たな大量論文不正が判明…トップ5のうち4人を日本人が独占する? 【NEW】
●なぜ日本人ばかり不正が多いのか?日本の評価制度と民族的気質が問題? 【NEW】


●研究不正大国日本 日本学術振興会・黒木登志夫顧問が指摘

2017/8/7:(危機に立つ日本の科学力)(4)実は「研究不正大国」 不安定な雇用・資金 背景(2017/1/9)という記事を、日経新聞が書いていました。しかし、「研究不正大国」と表現したのは日経新聞記者ではありません。記者がおもしろくするために、勝手に書いていたのではないんですね。

 指摘していたのは、日本学術振興会・学術システム研究センターの黒木登志夫顧問。2016年11月に大阪市で開かれたシンポジウムで、「日本は研究不正大国になった」としていたんだそうです。この黒木登志夫顧問が、研究不正に興味を持ったのは最近の話。14年に起きた理化学研究所のSTAP細胞問題などがきっかけだそうです。

 興味を持ったという黒木登志夫顧問が調べたところ、日本で研究不正が目立ち始めたのは00年代に入ってから。世界中の研究論文の撤回状況を監視するウェブサイト「リトラクション・ウオッチ」には、撤回本数の多い研究者のワースト10に日本から2人が名を連ねる、としていました。(引用者注:後述するように、その後さらに悪化しています)


●日本すごい!日本には圧倒的世界一の論文撤回数の准教授がいた

 ワースト10に入っていた2人のうちの一人は、東京大学分子細胞生物学研究所の加藤茂明元教授だそう。私の場合は、この方が研究不正についての話をやり始めるきっかけでした。異なる筆頭著者の論文で不正が次々と起きていたため、研究室ぐるみというタイプ。以下の報告は初めて知ったものの、トップダウン型不正の典型でした。

<「無理をしても応えるしかない」。東大が14年に公表した報告書は、研究室内で学生らへの強圧的な指示や指導が常態化し、データの捏造(ねつぞう)や改ざんが横行していた実態を明らかにした。有名科学誌への論文掲載を過度に重視する体質があったという>

 ただ、おそらく日本で一番撤回本数が多いというのは、彼じゃないと思われます。記事では触れられていないものの、我が国には、日本一どころか世界一だと思われる藤井善隆元准教授がいらっしゃいます。東邦大藤井善隆元准教授の全論文193本に不正・捏造の疑い、世界新記録か?で書いた方。こちらはトップダウン型ではなく、個人で成し遂げたタイプです。

 ちなみにSTAP細胞事件をトップダウン型に絡ませて語っている方もいるのですが、そちらも個人型・ボトムアップ型だと思われます。というのも、小保方晴子さんが筆頭著者である早稲田大学の博士論文、セルシード社関連論文、ハーバード時代の論文、理研の論文すべてで疑惑が生じていました。このことはトップダウン型では説明できず、個人の問題とした方が適切です。


●研究不正が増えたのは資金不足がきっかけ…対策は倫理教育?

 こうして日経新聞が研究不正に取り上げていたことは良かったのですが、不満だったのが研究不正への対策です。"日本で研究不正が目立ち始めたのは00年代に入ってから"と先ほどあったように、資金面、そして、そこから繋がる倫理面を強調していたのです。
 研究者の安定雇用と資金確保の問題も絡んでいる。日本は1996年度から科学技術基本計画を始動させた。5年ごとに大方針を設定して研究資金を戦略的に投入する仕組みを取り入れ、任期付きポストも増えた。

 04年度の国立大学法人化以降は、基礎研究を支える運営費交付金が減少。研究室を構える教授らが、公募後に審査して配分される競争的資金の獲得に追われる一方、雇用が不安定な若い研究者らは短期的な成果を求めるようになった。(中略)

 研究不正の横行に危機感を抱いた文部科学省は、倫理教育の充実やデータの適切な保存促進などの対策を進める。代表的な競争的資金である科学研究費補助金(科研費)を支給する日本学術振興会は15年に研究倫理の教材を作り、16年からインターネットを通じて浸透度を確認する「eラーニング」も始めた。

●本当に対策は倫理教育だけでよいのか?問題山積みの日本

 しかし、倫理教育ですべての不正が防げるわけではありません。競争を問題視するような書き方もしていますが、「科学」というものが現れた時期から不正があります。人間は不正をする生き物なのです。また、最近不正が増えたのは、もともとあったものが顕在化しただけという見方もあります。増えたように見えるだけという話ですね。これもやはり昔から不正があったという話です。

 それから、日本で問題なのは不正に対する意識のところ。私は罰則が甘すぎるというのも気になっていますが、そもそも不正を隠蔽するケースが多いのが大問題です。研究者倫理というか、調査する側の倫理もヤバイんですよ。例えば、岡山大では不正を指摘したら、調査するどころか指摘者を解雇してしまいました。

 これは、岡山大の森山芳則教授と榎本秀一教授、不正指摘の報復で解雇か?などで書いた話なのですが、それだけじゃないんですよ。<東北大の井上明久前総長の研究不正疑惑 外部調査しないと幹部が決定>(怪しい井上明久東北大前学長論文不正問題 損害賠償裁判では勝利にまとめ)で書いた、東北大も調査をさんざん拒みましたし、不可解なシロ判定というパターンも多いです。

 そもそも日本では、政府自ら不正の内部告発を握りつぶそうとしたり、告発者を暴露したりしています。こちらは、J-ADNIデータ改竄で厚労省田村憲久大臣、内部告発のもみ消しをはかるで書いた件。なので、政府からして本気で不正を問題と思っているか怪しいものです。

 他にも山ほどおかしい点があって、何から言えばいいのやら?という感じ。倫理教育はしないよりはマシではあるものの、優先順位は下だと思われます。

(2017/08/07;この投稿は今年のはじめに書いてストックしていたのですが、その後結果が発表された東大の研究調査も、東大不正、渡邊嘉典教授の捏造認定はとかげの尻尾切り?医学系の不正は認定されずなどで書いたように不可解なものでした)


●撤回本数世界一など、トップ10の半分が日本人というすごさ

2018/08/23:当初は、「研究不正大国日本 撤回本数世界一など、トップ10の2人が日本人」というタイトルだったのですけど、その後さらに増えてなんと5人を占めるという恐ろしいことになっていたので、追記してタイトルも変更しました。13位も日本人でしたので、13位までで6人となっています。

<論文監視サイト「リトラクションウォッチ」が作成した、撤回論文数の研究者別ランキング>
1位 藤井善隆 183本
2位 ヨアヒム・ボルト 96 ドイツ
3位 ディーデリック・スターベル 58 オランダ
4位 エイドリアン・マキシム 48 アメリカ
5位 ピーター・チェン 43 台湾
6位 佐藤能啓 42
7位 フア・ツォン 41 中国
8位 加藤茂明 39
9位 岩本潤 38
9位 斎藤佑司 38

11位 ジェームス・ハントン 37 アメリカ
12位 ヒュンイン・ムン 35 韓国
13位 森直樹 32
13位 ヘンドリック・シェーン 32 アメリカ

 6位にランクインしている佐藤能啓さんは他の投稿で取り上げていますけど、撤回論文がここまで増えていたことは知りませんでした。また、13位の森直樹さんの場合は、なんと現役の琉球大教授です。他二人は名前に記憶になかったものの、岩本潤さんは佐藤さん、斎藤祐司さんは藤井さんという大物不正研究者の共同研究者だったため、撤回論文数が多くなったようでした。


●論文数は少ないのに不正論文だけは多い日本、世界を圧倒

 これらの話が載っていたのは、サイエンス誌があぶり出す「医学研究不正大国」ニッポン( 榎木英介 | 病理専門医かつ科学・技術政策ウォッチャー 8/22(水) 15:19)という記事です。

 サイエンスでこれを取り上げたカイ・クーパーシュミット記者は、研究論文の5%しか作成していない日本人が、撤回論文が多い研究者上位10人のうち半分の5人を占めることを指摘しています。つまり、論文数の割に、研究不正をしまくっている人が多いということですね。

 日本は論文数が多い国というイメージを私は思っていました。ところが、うちの別の投稿でも書いたように、日本は人口の割に研究論文が非常に少ない国(ちなみに人口の割に優れた論文が少ない国でもあります)なのです。そして、論文数のわりに研究不正は極めて多い…というたいへん不名誉なことにもなっていると言えます。残念です。


●新たな大量論文不正が判明…トップ5のうち4人を日本人が独占する?

2021/06/17:大量不正はその後も多く発生しているようで、ベスト10の顔ぶれも入れ替わっていた模様。このため、一時的に日本人が半分より少なくなっていたことはあるようです。ただ、日本からまた新たなスターが登場していて、結局、半分を独占という構図は維持。なんとしても研究不正大国の地位を維持したいという意地が感じられます。

 新たなスターというのは、昭和大学・上嶋浩順講師が142論文で不正!大嶽浩司教授も一部共著に問題で書いた昭和大学の上嶋浩順講師と大嶽浩司教授。142論文すべてが撤回されるかどうかまだわかりませんが、100論文くらいは撤回されそうな感じでベスト5入り有力視されています。2021年5月28日の論文撤回を監視するサイト「リトラクションウォッチ」での研究者別の撤回論文数ランキングは、以下の通りだったそうです。

1位 F氏(日本人麻酔科医) 183報
2位 ヨアヒムボルト氏(ドイツ人麻酔科医) 155報
3位 S氏(日本人医師) 103報
4位 I氏(日本人医師、S氏の共同研究者) 79報
5位 ナザリ氏(イラン人 材料工学の研究者) 67報

(F氏は、東邦大藤井善隆元准教授の全論文193本に不正・捏造の疑い、世界新記録か?の件で、S氏は論文撤回、佐藤敬弘前大学長・佐藤能啓元教授の不正・不適切行為を認定の件?)

 これを記載した大規模研究不正ふたたび〜医学界は自浄能力を示せるか(榎木英介) - 個人 - Yahoo!ニュース(榎木英介 | 病理専門医かつ科学・技術政策ウォッチャー 5/29(土) 7:00)によると、今回の2人がトップ5に入ってくると、トップ5人中4人が日本人医師となるとのこと。また、トップ10まで広げれば、6人が日本人医師となるとしていました。


●なぜ日本人ばかり不正が多いのか?日本の評価制度と民族的気質が問題?

 論文不正は麻酔科医が多いこともポイント。1位から3位まで、あるいは4位まで麻酔科医が独占し、トップ10では5人が麻酔科医となりそうだとしていました。どうも麻酔科医は不正論文を量産しやすいみたいですね。また、榎木英介医師は、日本麻酔科学会調査報告書による日本の大学全般の評価制度の問題点の指摘を引用していました。

<多くの大学と同様に、昭和大学においても、診療科や個人の評価には、臨床業務実績や研究業績が用いられている。上嶋浩順氏は、自身の昇進だけでなく、医局員の任期更新や医局員のリクルートのため、共著者としての論文提供が必要であった。そのため、研究への関与なく、筆頭著者、共著者となる習慣が医局内に認められた。麻酔科内の組織運営の責任者である大嶽浩司氏は、このような体制を知りつつ、その体制改善の努力を怠っていたことは、今回の研究不正が継続的に行われてしまった背景要因として大きいと考える>

 上記は本麻酔科学会調査報告書からでしたが、榎木英介医師は評価制度としては麻酔科に限らないと指摘。さらにブレーキがないことも指摘していました。というのも、上記の通り、不正は本人以外にもメリットがあり、是正しようという判断が働きづらいため。何もしなくても論文を勝手に書いて名前を掲載してくれる部下は、上司にとって使い勝手のよい「業績量産マシン」になるとしていました。

 一方で、部下が研究不正に気がついたとしても、日本の場合、高圧的な態度や上意下達の雰囲気でとても意見など言えない閉鎖性があることも指摘。不正は海外の人もやっているのですが、日本人で特に多いというのは、この閉鎖性と先程の評価制度によって倫理より成果を重視してしまう…という問題がありそうですね。

 ただ、閉鎖性はともかく、日本人の方が成果主義的で「倫理より成果」というのは、日本人すごい!系の話と正反対で意外。とはいえ、「周りに倣う」という意味では矛盾しないかもしれません。みんなが不正をしないときは真似して不正しないものの、周りが不正しているとそれに倣って不正がはびこる…といった国民性なんだろうと思いました。


【本文中でリンクした投稿】
  ■東邦大藤井善隆元准教授の全論文193本に不正・捏造の疑い、世界新記録か?
  ■昭和大学・上嶋浩順講師が142論文で不正!大嶽浩司教授も一部共著に問題
  ■論文撤回、佐藤敬弘前大学長・佐藤能啓元教授の不正・不適切行為を認定
  ■岡山大の森山芳則教授と榎本秀一教授、不正指摘の報復で解雇か?
  ■<東北大の井上明久前総長の研究不正疑惑 外部調査しないと幹部が決定>(怪しい井上明久東北大前学長論文不正問題 損害賠償裁判では勝利にまとめ)
  ■J-ADNIデータ改竄で厚労省田村憲久大臣、内部告発のもみ消しをはかる  ■東大不正、渡邊嘉典教授の捏造認定はとかげの尻尾切り?医学系の不正は認定されず

【その他関連投稿】
  ■偽学術論文誌を悪用している日本の大学ランキング 驚きの1位は?
  ■世界一の研究捏造大国日本 2000年から急激に不正が増えた理由は?
  ■有名な心理学研究の60%に再現性なし 医療分野では70~90%も
  ■査読者が論文を却下して自身の論文に盗用 やっぱりあった査読者の不正
  ■科学技術立国が聞いて呆れる 日本の人口当り論文数ランキングの低さ
  ■研究不正疑惑についての投稿まとめ

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