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医療関係者にすらある「自殺未遂者は本当は死ぬ気はない」という誤解


 東京都福祉保健局の「自殺についての5つの誤解」というものを知りました。「自殺する人はその素振りを見せないものだ」「自殺未遂者は本当は死ぬ気はない」などの誤解が記されています。このうち、この自殺未遂者に対する誤解は、救急医療機関に勤める医療関係者にすら見られると書かれており、私はたいへんショックを受けました。

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●「自殺に兆候はない」という誤解と「兆候は手遅れ」という誤解

2017/8/12:自殺の心理 本気で死にたい人は言わないは大嘘など、何度も書いている「『死ぬ・死ぬ』という人は本当は自殺しない」というデマ。自殺についての5つの誤解 東京都福祉保健局でも、「かなり広く信じられている誤解」として最初に挙げられていました。

 また、ここで最後の5つ目にあった「自殺は突然起き、予測は不可能である」も似た系統。"自殺した人の8割から9割は実際に行動に及ぶ前に何らかのサインを他人に送ったり、自殺するという意思をはっきりと言葉に出して誰かに伝えている"としており、むしろほとんどの場合は何らかの兆候が見えています。

1.「『死ぬ・死ぬ』という人は本当は自殺しない」
5.「自殺は突然起き、予測は不可能である」

 上記ふたつは比較的似た方向性の勘違いだと感じましたが、すべてが同じ方向性の誤解ではなく、全く共通点が見られないものもあります。上記ふたつのように自殺に兆候などないと思っている人がいる一方、自殺する兆候が出た時点で手遅れなので周囲の人は止められないという誤解も広まっているようです。極端から極端にぶれますね。

2.「自殺の危険度が高い人は死ぬ覚悟が確固としている」

 東京都福祉保健局は、自殺する人は強い意志で死ぬことを決めているということはなく、<自殺の危険の高い人は「生」と「死」の間で心が激しく動揺しているのが普通>であり、<絶望しきっていて死んでしまいたいという気持ちばかりではなく、生きたいという気持ちも同時に強い>と指摘していました。


●死にたいと考えている人に自殺の話をするのはタブーというのも誤解

 上記のような両極端な誤解について強調したかったので先に言及しましたが、自殺についての5つの誤解 東京都福祉保健局に載っていた5つ全部をそのまま書くと以下のようなものでした。

1.「『死ぬ・死ぬ』という人は本当は自殺しない」
2.「自殺の危険度が高い人は死ぬ覚悟が確固としている」
3.「未遂に終わった人は死ぬつもりなどなかった」
4.「自殺について話をすることは危険だ」
5.「自殺は突然起き、予測は不可能である」

 このうち、4番目の「自殺について話をすることは危険だ」の意味が、私は最初わかりませんでした。よりわかりやすく言い換えると、「自殺の危険度が高い人に自殺についての話をすると、実際に自殺する危険性が高まる」という誤解といった感じかもしれません。

 要するに「自殺の危険度が高い人に自殺の話をするのはタブーで、別の話だけをするべき」という間違った理解のようです。この考えは間違っているだけでなく、むしろ自殺の話をした方が良い…というケースもあるとも言えそうでした。東京都福祉保健局では、以下のように書かれていたんですよ。

・自殺したいという絶望的な気持ちを打ち明ける人と打ち明けられる人の間に信頼関係が成り立っていて、救いを求める叫びを真剣に取り上げようとするならば、自殺について率直に語り合うほうがむしろ自殺の危険を減らす。
・自殺について言葉で表現する機会を与えられることで、絶望感に圧倒された気持ちに対して、ある程度距離を置いて冷静に見ることが可能になる。


●医療関係者にすらある「自殺未遂者は本当は死ぬ気はない」という誤解

 うちで全体のタイトルにしたのは、3番目の「未遂に終わった人は死ぬつもりなどなかった」です。これは冒頭でも書いた「『死ぬ・死ぬ』という人は本当は自殺しない」などと似た系統で、<本当に死ぬつもりがあったなら、確実な方法をとったはずだ>という誤解です。

 しかし、前述の通り、"心の中には「死にたい」という気持ちと「助けて欲しい」という気持ちの2つの相反する気持ちが揺れ動いて"いるわけですから、この解釈は完全に誤った素人考えです。"自殺未遂に及んだ人は、その後も同様の行動を繰り返して、結局は自殺によって生命を落としてしまう率が一般よりも高い"ということもわかっており、これは反論しようのない事実です。

 ところが、「この誤解は救急医療機関に勤める医療関係者にも見られます」とのこと。私はこれにひどくショックを受けました。医療従事者ですらこうした誤解を持っているというのは、非常に困ったこと。さらに救急医療機関という、自殺未遂者の対処に当たりそうな医療従事者ですら誤解しているとなると絶望的です。


●自殺未遂者の急患は身体だけでなく心も治す…岩手では優れた取り組み

 一方で、救急医、精神科医、ソーシャルワーカーがタッグを組み、自殺未遂者の方をケアしていく救急チームがあるという、岩手医科大学附属病院と岩手県高度救命救急センターにのようなところもあるそうです。ここでは、身体の治療が必須であると同時に、「精神的に重症」であるのだから、「身体的な治療、精神的な治療を同時に円滑に行う」という考え方を持っていました。

 精神科の医師が最初から関わっている他、「治療」以外の問題の解決法を患者や家族と一緒に考えるソーシャルワーカーも早い段階から関わっているとのこと。前述の5つの誤解は、一般の方々にももちろん認識を改めてほしいのですが、まず、プロである方々の意識が変わってくれないとまずいなと感じます。
(<NHKオンライン | 自殺と向き合う - 生き心地のよい社会のために>(2008年度掲載)より)
http://www.nhk.or.jp/heart-net/mukiau/shirou7.html

 それから、最後に、検索していて知ったこころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556) |厚生労働省というものを紹介しておきます。相談に対応する曜日・時間は都道府県によって異なるというのがやや面倒ではあるものの、どの地域でも「0570-064-556」で統一しているということでした。


●自殺志願者を引き止める人こそが自殺者を増やすという謎理論

2017/10/31:神奈川県座間市のアパートで、9人の遺体の一部が見つかりました。遺体発覚のきっかけとなった20代の女性は、ネット上に「自殺を一緒にしてくれる人を探している」と書き込んだことで、アパートの居住者である男性と知り合ったとみられています。
(神奈川 座間のアパートで9人の遺体 20代男逮捕へ | NHKニュース 10月31日 10時26分より)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20171031/k10011205331000.html

 このニュースに関する反応で、「自殺志望者の多くは本当は生きたがっているので、『自殺志望者の望みを叶えてあげただけだから大して悪くない』というのは間違い」というものと、「『自殺志願者の多くは生きたがってる』だなんてわかった風なこと言って生を強要する人こそが自殺志願者を増やしてる」というものがありました。

 どちらも結構同意を得た反応だったのですが、後者の方が4倍くらい同意が多くなっていました。しかし、もともとうちで紹介していた東京都福祉保健局の「自殺についての5つの誤解」を見てわかるように、間違いがはっきりしていて、なおかつ危険なのは圧倒的に同意数が多かった後者の方です。

 この主張は、そもそもどういった根拠があるのかわからないものだったのですが、自殺についての5つの誤解のうち「自殺の危険度が高い人は死ぬ覚悟が確固としている」に引っかかりそうなもの。少なくとも自殺者の中には、確固たる自殺の意志がない人が含まれており、自殺を止められる人がいるとは言えますので、この主張はたいへん問題があります。

 なお、同日にトップページに上げた銃規制派は左翼!とアメリカの銃推進派 購入の待機期間導入だけで死亡者は減少するで書いたように、購入の待機期間導入だけで銃による自殺者が減少するのも、同様の理由がありそうでした。また、先の問題の主張は、ひょっとしたら自殺についての5つの誤解の「自殺について話をすることは危険だ」についても、誤解しているかもしれません。説得することをむしろ害悪だと考えているような内容ですからね。

 で、前述の通り、こうした問題ある主張、自殺者をさらに増やしかねない根拠のない主張の方が日本ではむしろ多くの賛同を得ている…というたいへん困ったことになっています。この5つの誤解についての認識は、もっと広まってほしいです。


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【本文中でリンクした投稿】
  ■自殺の心理 本気で死にたい人は言わないは大嘘
  ■銃規制派は左翼!とアメリカの銃推進派 購入の待機期間導入だけで死亡者は減少する

【その他関連投稿】
  ■日本の自殺者数の男女の比率 と 年齢・性別による理由・原因の違い
  ■日本の自殺者数が最大になったのはいつ?自殺者数の推移を見る
  ■自殺の兆候・前兆を見逃すな!…というが、素人にわかるものなのか?
  ■ストレートな自殺の前兆 「死にたい」と言って亡くなった事例集
  ■自殺の原因・理由 経済問題(貧困)や健康問題(病気)などの比率
  ■人生・生活についての投稿まとめ

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