あからさまに批判していたわけじゃないのですが、話題になったAmazon Goについて、パナソニックの技術者が「簡単に実現しないはず」というちょっと慎重な見方をしていました。実はパナソニックも省力化を狙った実験を、ローソンで行っており、ライバル心があるのではないか?と思います。
<Amazon Goよりすごい?JR東日本の無人店舗で実験>、<ライバル(?)のローソン役員「アマゾン・ゴーは我々よりコストが高い」>、<アマゾンゴーはむしろ日本のコンビニより店内スタッフが多い?>などの話をまとめています。
2022/08/25追記:
●アマゾンゴーはむしろ日本のコンビニより店内スタッフが多い? 【NEW】
●アマゾンゴーはむしろ日本のコンビニより店内スタッフが多い?
2022/08/25追記:その後、アマゾンゴーも日本版アマゾンゴーも話を聞かなくなりました。ただ、以前、ブックマークして使っていなかった話があったので紹介。アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊さんの
【アマゾンゴー】、日本のコンビニより店内スタッフが多い!レジなしコンビニは超有人?:激しくウォルマートなアメリカ小売業ブログ(2018年03月11日)というブログ記事です。
私はアマゾンゴー方式に好意的ですが、ネガティブな話も紹介しておこうと思い、タイトルだけ見てブックマークしていた話だったんですよ。ところが、内容を読んでみると、「アマゾンゴーのレジは使い物にならなくて実は人がやっている」といった話ではありませんでしたわ。本来なら見せない調理スタッフを積極的に見せているという話でした。
<アマゾンゴーのレイアウトは雇用を見せるつくりとなっている。(中略)最も裏方となるスタッフをわざわざ店の正面で見せているのだ。(中略)
アマゾンゴーで最も商品アイテム数が多いのはサンドウィッチなどのデリだ。(中略)アマゾンゴーではこれらデリアイテムを店内で調理している。調理場を通りに面したガラス張りのオープンキッチンにしている。アマゾンゴーでは調理現場をわざわざ店の前で見せているのだ。オープンキッチンはストリートレベルより低い位置にあるため、目に付きやすい。開店前から調理を始めるため外が暗い時間だと、キッチンの明るさでさらに人目をひくのだ>
こうした人を見せるやり方は、当然、フレッシュさを印象付ける狙いがある他、透明化することで食の安全にもつながる…といった狙いがあるとのこと。宣伝にもなるでしょう。また、アマゾンは叩かれやすい企業であり、「雇用を奪うようなイメージをアマゾンゴーに植え付けたくない」という事情もある模様です。
●Amazon Goは非現実的?パナソニックがライバル心燃やす
2017/08/27:このパナソニックの技術者というのは、パナソニック オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社技術本部の足立秀人・ロボティクス開発室長です。
(
ローソンが実験店「電子タグで無人会計」:日経ビジネスオンライン 藤村 広平 2017年2月15日より)
記者はパナソニックの電子タグについて、いろいろと説明を聞いた後、「あっち(Amazon)のほうが進んでいるんじゃないですか」という意地悪な質問をしていました。これについて、まず、足立室長は「あれもすごいですよね」と、Amazonを立てました。しかし、続けて以下のようなちょっとネガティブな発言をしていました。たぶん「実際には、できっこないだろう」というニュアンスでしょう。
「けれど、たとえば重なりあった商品を本当に認識できるかとか、実現に向けては技術的なハードルがとても高いですよね」
あと、最初読んだときはAmazon Goを持ち上げたと思った「あれもすごいですよね」も、読み返してみるとパナソニック側の自信を感じさせます。「あれはすごい」ではなく「あれもすごい」という言い方。つまり、パナソニックの試みと、Amazonの試みは同じレベルだと言いたいようです。ひょっとしたら本音は、「パナソニックの方がすごい」かもしれません。
●未来的でSF的なAmazon Goの買い物体験
では、パナソニックはどういった実験をしていたの?という話なのですが、先にAmazon Goについておさらい。
米Amazon、レジ会計の必要がないコンビニ「Amazon Go」を発表 | IoTニュース:IoT NEWS(2016.12.07 10:59)によると、Amazon Goも未来の話ではなく、今年オープンする予定。社員向け店舗も既にあります。Amazon Goは、買い物客がレジに並ぶ必要はありません。以下のように買い物を行うようです。
(1)買い物客はスマホをかざして店内に入る。
(2)選んだ食品などをそのまま自分のバッグに入れる。
(3)レジに並ぶこともなく、そのまま店を出ていく。
Amazon Goを利用するには、Amazonのアカウント、スマートフォン、Amazon Goのアプリがいるものの、買い物と言うよりは「万引き」。画期的すぎて、ネットでは大興奮でした。また、記事では、自動運転技術に使われているものと同じタイプのテクノロジーが使われていると言います。具体的には、コンピューター・ビジョン、センサーフュージョン、ディープラーニングです。
パナソニックの方の記事でも説明がありましたが、上記よりかなり簡潔な説明で、「カメラとセンサーを組み合わせて商品やお客の動きを把握し、アマゾン・ドット・コムのアカウント情報と連携して自動で支払いを済ませる」としていました。
●パナソニックはローソンで電子タグを用いたRFID使用の実験を実施
Amazon Goに比べると、パナソニックがローソンで行った実験は正直言って地味すぎです。これはパナソニックの方が、全く話題になっていないというのでもわかります。ただ、たぶんパナソニックにしてみれば、うちでさえやっとこのレベルなのだから、そんなすごいのができるわけないってことなのでしょう。
パナソニックの技術は、RFIDという名前がついています。読み方は、アールエフ・アイディーで、Radio Frequency IDentificationの頭文字をとった略語。そして、意味としては、「ステッカーのような電子タグに記録された情報を無線で検知することで、それぞれの商品を判別する仕組み」といったものです。
全く実績がないわけではなく、ファーストリテイリング傘下の「ジーユー」などアパレル業界では導入が始まっているとのこと。そういえば、ニュースを見た覚えもあります。
このシステムを使えば、レジで店員がすべての商品のバーコードをそれぞれ読み取っていたのを、カゴに入った商品を専用の装置に入れるだけで、ものの数秒でスキャンが完了するというもの。在庫管理含めて、人手不足の解消になるとしていました。
確かに楽にはなるのですが、結局、レジに行く必要がありますし、店員の仕事もあります。Amazon Goを読んだ後では、どうしてもインパクトに欠けてしまいました。Amazon Goの実現可能性はともかく、「あれもすごい」ではなく「あれはすごい」と言うべきだったと思いますね。
(Amazon Goの実現可能性について補足。この下書きは2月にしたものでしたが、2017/08/27に
Amazon Go - Wikipediaを見ると、"シアトルのAmazon Goのプロトタイプは店舗内の複数のユーザーや物体を追跡する能力に問題があったことで一般公開が遅れている"とのこと)
●実はちっとも現実的ではないパナソニックの構想
また、パナソニックとしては、こちらの方が現実的という見方のようですが、記事のサブタイトルは、"便利で「誤作動はほぼゼロ」も、普及には課題山積"というもの。実はこちらも難題だらけで非現実的なところがあるのです。課題は以下のように、かなりたくさんあります。
・電子タグの価格は「現時点で1枚10円弱」で安い商品では使えない。
・電子タグを全商品に取り付ける必要があるが、タグの取り付けという物理的な手間がかかりすぎる。
・包装の一部としてあらかじめ取り付ける手があるが、そのためには無数にある食品や日用品メーカーに協力してもらう必要がある。
・電子レンジで温めるような商品は現時点で電子タグに対応していない。
・RFID非対応の商品があると、別々に買ってもらう必要がある。
先に出てきたように、既に使われている店舗があるにはあるので、「現実的」ってことかもしれません。ただし、かなり条件が限られると思われます。
タグを取り付けられるコストに見合う高い商品限定というだけでなく、製造元がバラバラだと対応は難しくなります。製造から小売まで一貫して行う製造小売業のお店が、自社だけの比較的高価格な商品を扱うお店という限定した条件でないと、現時点ではメリットがなさそうでした。
記事では、先に出たようなハードルを乗り越えていくためには、RFIDが業界標準となり、全メーカー、全小売店を巻き込んだ取り組みに発展させる必要があるので、経済産業省に音頭を取ってもらいたいところだともしていました。
でも、正直、これ、全然有望そうに見えませんよ。どこが現実的なの?というシステム。Amazon Goが嘘八百だとわかれば再検討の価値が出てきそうですけど、現状ではむしろパナソニックのシステムの方が実現度の低い妄想に見えます。これに日本政府が力を入れたとしても、また税金の無駄遣いになるだけなんじゃないですかね…。
●実用化は無理だろう…疑問視されていたAmazon Go、ついにオープン
2018/09/07:その後ニュースを見ていなかったので、ポシャったのかと思っていたAmazon Goですけど、一般向けのお店もついにできていたんですね。
Amazon GO1号店がついにシアトルにオープン!レジがないAIコンビニの全貌とは※18/9/7続報(2017-6-13)という記事を見つけました。
Amazon GOの1号店がアメリカ・シアトルにオープンしたのは、2018年1月22日のこと。当初の予定では2017年の早い時期にオープン予定だったものの、システムの技術的な問題で開店が延期となってかなり遅れました。ただ、それでも立派なものだと思います。
記事では、Amazon GOの開店が延期となっていた原因として、20人以上の来店客の動きを同時に追うことが困難と報じられていたため、開店したということはこの課題が無事解決したのではないかと書かれていました。
ただ、開店したのはいいがトラブルだらけとか、需要がなかったとかみたいなのは、あり得なくもないので、注視しておきたいところ。とりあえず、現時点ですでにシアトルに3店が開店している他、サンフランシスコとシカゴにもオープンする見込みであり、極めて順調そうでした。
●Amazon Goよりすごい?JR東日本の無人店舗で実験が行われる
2018/10/22:JR東日本が、AI(人工知能)技術を用いた無人決済システムの実験店舗を、赤羽駅ホームに10月17日オープンするという、オープン前の記事
JR東の無人決済店舗で“万引き”してみた - ITmedia NEWS(2018年10月16日 18時30分 公開 [片渕陽平,ITmedia])。
入口とで出口が別で、一本道になっており、棚から商品を取りながら進む店舗。客が入口でSuicaなど交通系ICカードをかざすとドアが開くそうです。「一度に入店できるのは3人まで」ともあったのですけど、これはドアが開いて一気に3人入れるという意味じゃなくて、たぶん1人1人認識しながら入って最大3人って意味じゃないかと思われます。
出口にある端末に交通系ICカードをかざすと、備え付けのディスプレイに購入した商品名、合計金額が表示し、決済が完了すれば、出口ゲートが開く仕組みとのこと。実証実験では、ICカードの残高が不足している場合、商品を棚に戻して一度退店する必要があるという書き方でしたが、本番どうなるかは書かれていませんでした。
私がパナソニック方式で疑問だった電子タグは不使用というのは好感。100台以上あるカメラで認識する形式だそうです。技術開発には、ベンチャーのサインポストというところが協力しているとのこと。
意地悪な記者は、カメラが誤認識しないか試してみたとのこと。Amazon Goでも当初苦労したところですから、これは大事なところです。棚の手前ではなくあえて奥から商品を取り出す、一度手に取った商品を棚に戻す、購入前の商品をバッグに入れる“万引き”行為などをやってみました。
しかし、あっさり万引きはバレました。といっても、実店舗のようにしょっぴかれるわけではなく、端末で万引きしたつもりの商品も請求されるという形。棚から商品を手に取った時点で人物とひも付けているため、不正は難しいようです。イケそうですね!
また、カメラ精度の向上といった技術的課題よりも、物流や品出しなど決済シーン以外での省力化、ホーム上の店舗でどのように安全性を確保するかといったところの方が問題とのこと。やはり技術的には問題ないってことなのかも。Amazon Go以上と言える要素は特にないものの、追いつける可能性を感じます。
●ライバル(?)のローソン役員「アマゾン・ゴーは我々よりコストが高い」
2019/02/04:
アマゾンとグーグルが破壊するもの 小売と食品メーカーは潰れる?で紹介した記事では、アマゾン・ゴーを視察したパナソニックの電子タグRFIDを使うローソンの役員の話も出ていました。私はパナソニック方式がむしろコスト的に非現実的だと感じたものの、この役員は逆だと言っています。
「アマゾン・ゴーはよくできた仕組みだが、多数のカメラが必要でコストが高い。我々はスマートフォン(スマホ)とQRコードを組み合わせた安価な仕組みでレジなし決済を実現したい」
以前の追記で紹介したように、そのアマゾン・ゴーはすでに店舗を増やしています。アマゾンは利益度外視でも攻める社風の企業のために、コストの問題があっても無視している可能性はあるでしょう。ただ、とりあえず、2021年までに最大で3000店舗出店するという計画になっていて、めちゃくちゃ増やす予定だそうです。
2019/03/08:投稿直前に読み直していて気づいたのですけど、スマホとQRコードを組み合わせたしくみということは、電子タグとRFIDを用いたパナソニック方式は捨てたってことでしょうか。それなら電子タグ方式で言われた「1枚10円」などのデメリットがなく、一気に現実的になりそうな感じ。アマゾンよりすごいかどうかは詳しく聞かないとわからないものの、電子タグを使わないやり方は支持します。
●アマゾンGOの実現にはRFID(電子タグ)が必要…最初は誤解されていた
2019/10/29追記:2018年末に日経トレンディが選んだ2019年ヒット予測ランキングには、「日本版アマゾンGO」が4位だったとのこと。最近あまりニュースを見ていないのであれですけど、残念ながらこの予想はハズレたのではないでしょうか。話題になっているのを全く聞きません。アマゾン・ゴーの方の話題も最近はあまり聞きませんけどね。
この話があったのは、
2019年ヒット予測にランクインした「日本版AmazonGo」の現状と課題|【trans+(トランスプラス)】(2018.12.10)というコラム。ここではアマゾンGOについて、当初パナソニックが自身を見せていた電子タグとRFIDを用いた方式を絡めた説明をしていました。
それは、「Amazon Goは、画像認識AIを駆使したストアであり、商品識別にRFID(電子タグ)を使用していないのが特徴」というもの。別サイトも読んでみると、どうもアマゾンGOが最初発表された当初後者のRFIDだと予想されたのに違ってびっくり…という感じだったみたいですね。
私が2つ前で書いた赤羽駅は、アマゾンGOと同じくカメラが客を追跡して人と商品を識別する仕組み。一方、CEATEC JAPAN 2018に出展したローソンの「ウォークスルー決済店舗」は、やはりAIによる識別ではなく、商品にRFID(電子タグ)を貼付して決済管理する方式。諦めていなかったようです。なお、イベントへの出展ということでわかるように、コラムの時点ではまだ実証実験には至っていませんでした。
●アマゾンGO式とRFID(電子タグ)式、日本政府が推してるのはどっち?
作者は実際に「日本版アマゾンGO」も体験。赤羽駅方式はアマゾンGOと違って先に決済を行う作業が必要であるものの、他はほぼ同じ。やはり赤羽駅方式は良い感じですね。ただし、最大3名までという入場制限はデメリット。アマゾンGOも当初は数人までしか対応できず苦労しました。でも、今は同時に数十名が入店できるとのことで、やっぱり普通にアマゾンGOはすごいようです。
この点では、パナソニックのRFID無人コンビニの方が有利でしょう。入場制限がありません。こちらも決済が必要ではありますが、ゲート前に設置されたリーダーにアプリのQRコードをかざして2秒で完了し簡単。パナソニックがQRコードと言っていたのはこれのことだったんですね。
一方、RFID方式の難点では、取り付けコストに関しては、パナソニックも考えがあったようです。RFIDタグの自動貼り付け機も展示されていたとのこと。コンベアーに流した商品のバーコードを読み込み、その商品情報をRFIDタグに書き込んでタグの貼付までおこなうという優れものだそうです。ここはコスト削減できました。
とはいえ、他の指摘された問題は未解決。コラムでは「RFIDタグは1枚10~20円ほどのコストがかかる」ということで、この最も大きい問題は解決できていません。コラムでは、数十円から数百円程度の商品を扱うコンビニでは非現実的…といった書き方をしていました。また、レンジで温める場合はRFIDタグを取り外すとも書いていて、この問題も未解決です。
あと、最初に紹介したときに「経済産業省に音頭を取ってもらいたいところだ」という話があったのですけど、実はその時点で国がすでに絡んでいた模様。2017年4月には「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」を発表し、2025年までにすべての取扱商品に電子タグを利用することでコンビニ大手5社と合意していたとのこと。
こうすると確かに普及の可能性は高まるでしょう。電子タグが量産化されることで、高コストの問題もひょっとしたら解決するかもしれません。ただ、また非現実的なやり方に多額の税金をツッコんで無駄にする…みたいなことにならないといいなぁと、心配に思います。
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