書きたかったのは鍼(はり)治療なのですが、肯定サイトではお灸とセットで鍼灸(しんきゅう)治療としていましたので、タイトルもそんな感じになりました。私は一部に医学的根拠があると聞いていたのですが、肯定サイトを読んでみると、大げさで紛らわしかったり、実験方法に問題を感じたりで、びっくり。書き始める前より印象悪くなっちゃいました。
信頼できる研究も存在するかもしれませんが、ちょっと落ち着いて距離を置いていた方が良いかもしれません。(2017/09/11)
●巨人沢村投手が鍼(針)治療で神経麻痺に…
2017/09/11:巨人の沢村拓一投手(29)は、右肩のコンディション不良のため2軍で調整中です。精神的要因で制球できなくなる「イップス」と指摘する声もあったそうです。
ところが、球団関係者によると、沢村投手は2月の沖縄キャンプ中に右肩に異変を感じ、球団トレーナーのはり治療を受けており、これが原因の可能性が高いというのです。球団が調査した結果、複数の医師から「長胸(ちょうきょう)神経麻痺(まひ)」と診断され、「外的要因によるもので、はり治療によって長胸神経麻痺となり、前鋸(ぜんきょ)筋機能障害を引き起こした可能性が考えられる」との所見を得たといいます。
この神経麻痺は、日常生活の動作でも右肩に違和感が出るものとのこと。ただ、記事では、「沢村は謝罪を受け入れ、球団は一日も早い復帰に向けたサポートを約束した」として、円満解決だといった調子でまとめていました。スポーツ報知は読売系だからかもしれません。
(
【巨人】球団が沢村に謝罪…施術ミスで神経麻痺 9/10(日) 9:19配信 スポーツ報知より)
●鍼灸は非科学的?科学的根拠はあるの?
これを受けて、鍼(はり)治療は疑似科学ではないか?といった声も出ていました。ただ、上記は失敗したという話であり、それがただちに非科学的だということにはなりませんよね。西洋医学でもミスは珍しくないことです。
また、一部の鍼治療は研究でも効果が確かめられていたと思います。大和薬品株式会社なんかは、
エビデンスに裏付けられた鍼の効果という主張が強いタイトルのページを用意していました。(ここでは、エビデンスを科学的根拠と訳しています)
このページでは、鍼のさまざまな効果については世界保健機構(WHO)も認めていると主張。臨床実験に基づき発表した「鍼療法お勧め疾患リスト」には、腹痛、便秘など多数の疾患が掲載されているとしていました。
同様にお灸を含めた鍼灸治療について、オールアバウトでは
なぜ鍼灸は効果があるのか? 鍼灸の基本解説 [東洋医学] All About(不妊鍼灸ガイド 徐 大兼)というタイトルで肯定していました。このサイトは、
死亡の危険性もある塩水洗浄・レモネードダイエット 土井千春氏のAll Aboutの記事などが拡散という前科があるんですが…。
とりあえず、中身を見てみると、こちらでもWHO(世界保健機関)の件を強調。ただ、「鍼灸
適応症一覧」と訳しており、大和薬品の「鍼療法
お勧め疾患リスト」という書き方は大げさな訳し方かもしれません。
●プラセボ効果じゃないの?実際の実験例を見るとプラセボ効果を否定できず
オールアバウトでは、肩こりの痛みの軽減に対するランダム化比較試験(RCT)についても紹介。ローランドモリス質問紙(RDQ)により、鍼による施術を受ける前、2週間目、6週間目、9週間目に合計4回、痛みの度合いの評価を行い、数値化して比較したというものがあるようです。
これによると、鍼による治療を行ったグループの方が、行っていないグループに対して低い数値(痛みを少なく感じるスコア)になるという結果が出ました。これは、鍼治療を行うことにより、肩こり(=痛み)が軽減されているということになると断言していました。
ただ、この書き方だけ見ると、プラセボ効果(思い込みによる効果)の影響は排除できていない感じですね。より良いランダム化比較試験(RCT)では、全く見分けのつかない偽の薬と試験したい薬を本物かどうか知らずに飲みます。これでしたら、思い込みによる差は起きません。
でも、上記の実験では、条件が全く異なっており、信頼性は低いと思われます。ひょっとしたらもっと良い研究があるのかもしれませんけど、鍼治療の特性からしてこれ以上の実験は難しいのかもしれません。
●たとえ一部が本当でも全部が本当という意味ではない
また、ある症状において鍼灸治療が効果的であると科学的に証明することが、すべての鍼灸治療を肯定するわけでもないことにも注意が必要です。一つ一つ確かめていかないとダメなんですよ。それが科学というものです。
例えば、
絶対に受けてはいけない10のはり治療 | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)(Steven Salzberg 2017/03/05 10:00)では、一部の鍼治療を問題だとしていました。
これは、オーストラリアの研究チームが5年前に医学誌「Medical Journal of Australia」に発表した論文が根拠。数千種類もの医療行為を検証し、効果がなかったり、逆に人体に害を及ぼしたりする156種を特定しており、その中に鍼治療が含まれていたのです。
1. 妊婦に対するはり治療
2. 子宮類線維腫に対するはり治療
3. 過敏性腸症候群(IBS)に対するはり治療
4. 滲出性中耳炎(OME)に対するはり治療
5. 男性における下部尿路の症状に対するはり治療
6. 高ビリルビン血症に対するはり治療
7. 手根管症候群に対するレーザーはり治療
8. うつ病に対するはり治療
9. 変形性関節症に対するはり治療
10. ベル麻痺(顔面神経麻痺)に対するはり治療
●鍼治療は「時代遅れのえせ科学」との主張も
この記事の作者はかなり辛辣で、これはこれで偏ってますかね? 「はり治療に関する研究論文は今後も出てくるだろうが、新たな発見は期待できない。人々は、この時代遅れのえせ科学について、いい加減目を覚ますべきだろう」と書いていました。
また、中国では、はり治療を支持する研究論文しか執筆されないともしていました。こうなると、肯定的な研究論文が多くあったとしても、信頼性に疑念が出てきます。
例えば、はり治療が片頭痛に効くとの研究論文がJAMAインターナル・メディシン誌に発表されたものの、なんと同誌の同じ号に、カリフォルニア大学サンフランシスコ校のエイミー・ゲルファントさんがこの研究結果を否定する論評記事を寄稿していたということもあったそうです。
私は鍼灸治療がニセ科学だとは断言しませんけど、医学的な根拠の確認については発展途上なところを感じますので、まだ慎重に見ておいた良いと思っています。
【本文中でリンクした投稿】
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